テレビが普及する前、庶民に人気の娯楽は映画でした。
まだ物資が不足している時代、毎日の生活に追われる中でたまに行く映画は大きな楽しみ。
スクリーンに映る映画スターの華やかな姿に観客はうっとりしていたのです。
今でもテレビで女優やアイドルが身にまとったファッションが女性たちの流行になりますが、昔は映画スターがファッションリーダー。
ヒット作の女優のヘアスタイルや着こなしを、女性たちは争って真似しました。「私もあんな風になりたい!」いつの時代も心は同じですね。
中でも大流行したのが「真知子巻き」。
1953年に封が切られた映画「君の名は」のヒロイン真知子がしていたショールの巻き方です。
白レースのショールを肩から頭をおおうようにぐるりと巻き、端を前後に垂らすこのスタイルは、あっという間に日本中に広まりました。
もともと真知子役の女優、岸恵子が北海道ロケで寒さしのぎに巻きつけたのが始まりです。
偶然生まれた「真知子巻き」ですが、はかなく揺れるショールが運命に翻弄される真知子のイメージにぴったり合ったのですね。
「君の名は」は1952年に始まったラジオドラマ。翌1953年から1954年まで3部作の映画が公開されました。
数寄屋橋の上で半年後の再会を約束しながらも、会えそうで会えない真知子と春樹。
二人の切ないすれ違いに女性たちは胸をときめかせ、ショールを巻いて自分を真知子になぞらえたのでした。